Loading…

きっとあなたは、あの本が好き。 都甲幸治ほか

Posted by 彩月氷香 on 11.2016 未分類   0 comments   0 trackback
4845627493
立東舎
Amazon

「連想でつながる読書ガイド」と副題にあります。
ちなみに「ほか」の方々は以下の通り。

武田将明 藤井光 藤野可織 朝吹真理子 和田忠彦 石井千湖 阿部賢一 岡和田晃 江南亜美子 今井キラ

単純に言えば「〇〇の本が好きな人だったら、たぶんこの作品も好きなんじゃないかな」っていう紹介というか雑談。各章が三名での座談会方式になっているので堅苦しくなく、ちょっと高尚な茶飲み話風に仕上がっています。

座談会のメンバーの中では意外なことに、その著作が私が大嫌いな朝吹真理子さんがなかなか興味深い発言をしていて。でも、彼女イチオシの作品が私はやはりどうにも好きになれなかったという点からしても、相容れない感性の持ち主なんだと実感。

その作家というのはミランダ・ジュライという現代作家なのですけれど、何しろ女子っぽさが強い。それは朝吹さん自身と通じるし、ミランダ・ジュライが好きなら中原昌也がおすすめという発言から、読んだこと無いけれどきっと私は中原昌也の作品は好きじゃないだろうと予感。うー。予感の確認のために、読んでみるか見ないか悩むな。

ケリー・リンク「マジック・フォー・ビギナーズ」は柴田元幸の翻訳ということで読んでみたいのだけれど、この話の流れで紹介されている点に不安が生じる。不思議系の小説っていうのは私はどちらかというと不得意で、だけど時々もの凄くツボにはまるんですよね。

小説を読むと人格が育つ、なんていうことがよく言われるけれど、そういう道徳的な言説をはじき返す力が、ミランダ・ジュライやケリー・リングにはある、と都甲さんは言います。そうだかどうだか判断はできませんが、その都甲さんに対する朝吹さんの『「役にたたない」とか「無駄」って、すごくいいことですよね』っていう言葉には共感します。

っていうかですね。都甲さん、「『痴人の愛』が自分の中で世界ランキング一位、谷崎が世界一の作家」って凄いことをおっしゃられます。谷崎は私も結構好きな方ですけど・・・世界一? 羨ましいです、そこまで思える作家がいるって。

で。褒めちぎっているのに、実はナオミって端から見たらたいしたことない女性なんじゃないかって書いてたりする。実は非モテ同士の恋愛なんじゃないか?って。私も作品を読みながらナオミが美少女に思えなかったんで、その視点はありかも。

他にも三島由紀夫は「笑いながら読んでいいと思います」等、過激発言が続き。私も三島は文豪っていうより、エンターテイメント性の高い作家だと感じてはいるものの、えっ、もしかしてバカにしてます?っていうくらいのノリ。そもそもなんで「美徳のよろめき」を取上げたんでしょう。

その流れで次に江國香織に行っちゃう。ああ、ダメだ(笑) 江國香織って読めるんだけれども、何かこう、フィットしないっていうか。「東京タワー」と「きらきらひかる」と「神様のボート」。ふんふんふん。私、女子っぽいのがダメなんだわ。

そして、次にワイルドの「サロメ」へ。これはいいよね。いい。どうして、こう来るんだろう。次にイヴァシュキェヴィッチの「尼僧ヨアンナ」を取上げると。これは未読だけど読んでみたい。スーザン・ソンタグの「私は生まれなおしている」はきっと苦手だけど面白いだろうという本。そして川上弘美「水声」。うーん。川上弘美は好きな作品とそうでないものとが何故か如実に分かれる作家で。気配的にこの作品は苦手そうですね。

そして都甲さんの「やっぱり谷崎が凄い。ノーベル賞10個あげたい!」発言で終わるという・・・何だこれ。

つまり「きっと好き」と言われても、私は好きじゃないわ、残念でした〜!っていうオチになりそうな、読書案内。それでもこの本そのものが面白い。ちょくちょく共感できる場面もあって。それは本好きならではの感覚だなぁと感じる。

特に共感したのは、古い翻訳の良さを語ったところで。新訳の良さもあるけれど、古めかしい言葉の方が雰囲気にあっている場合もあるし、原文に対する思いの量が感じられたりするし、絶版にする必要はないという意見。私も古い訳が好きな方で。「この面白さを伝えたい」っていう気持ちをすごく感じるという都甲さんの発言もなんかわかる。

「謎を解くことがミステリーの本質的な課題ではない」ということはミステリーというジャンルが確率する過程で、徐々にはっきりしてきたことだもの。チャンドラーはその発見に貢献した作家だと思う。

このあたりも、名言! そして散々語られていることだけれど村上春樹との類似性を指摘される作家たちの話も、実感がともなっていて面白い。まるで村上春樹を読んでいるみたいに感じる小説って実は翻訳ものに少なからずあるんですよね。生理的に私は気持ち悪く感じてしまうのだけれど。

「ロング・グッドバイ」は凝った比喩など、文章にコストがかかっている・・・という言い方も面白い。

あと、やっぱり作家のデビュー作っていいなあと思う。持ってるものを全部投入してて豪華じゃない(笑)。使い回し感がないっていうか。

これは私も、持論として繰り返し言っていることなんですよね。デビュー作だけが好きな作家とか、結構あります。

さて、ミステリーの流れで紹介されている本は好きになれそうなものが多い。トレヴェニアン「夢果つる街」とか好きだし、田中小実昌は読んでいないけれど、ずっと読みたいと思い続けている作家。いい訳ってなんだろうっていう話が合間に出てくるのも楽しいし、大好きなウンベルト・エーコの「薔薇の名前」も取上げられるし。イタロ・カルヴィーノやトマス・ピンチョンへと話が移っていくのも自然に思える。

そう考えていくと、私の得意分野はミステリーなのかもしれない。ファンタジーがそれに続くかどうかは少々疑問があるけれど、底辺にはファンタジー愛みたいなものはある。トールキンがファンタジーの効能は「回復、逃避、慰め」だと語っていたというのはすごくわかる。

そしてもう一回、村上春樹が登場して、ファンタジーとの関連が語られる、と。っていうか私、村上春樹はファンタジーなんだと思っている。

イスマイル・カダレの「夢宮殿」は読んでみたい。不条理ということに関して語られている場面があるけれど、不条理と悪の関係についての阿部賢一という人の言葉が私は好きですね。この方の紹介していたロダーリの「羊飼いの指輪」、レーナ・クルーン「ウンブラ/タイナロン―無限の可​能性を秘めた二つの物語」は読んでみるつもり。

阿部さんは今回いちばん気になった語り手だった。あとがきでこの本を主催した都甲さんはこんな風に書いていましたっけ。

阿部賢一さんと会うたびに、こんなに賢く、何でも知っていて、しかも人柄もいい人がいるなんて、と圧倒されてしまいます。驚くほど幅広いジャンルの作品を正確に読めるからこそ、東欧文学好きに限らない読者を阿部さんは獲得できているんだな、と強く思った鼎談でした。

余談ですが、「鼎談」って言葉を私は恥ずかしながら知りませんでしたが、三人が向かい合って話をすることを言うんですね。

伊坂幸太郎に関しては「悪」について考察されていて。これは私も伊坂幸太郎を読む度に気になっているポイントだったので非常に興味深かった。その流れで話題にあがったハニフ・クレイシ「言葉と爆弾」は小説ではないけれど、是非読んでみたい。「トレインスポッティング」も映画も観ていないし、観たいとも思わなかったしするけれど、本は読んでみようという気持ちになった。え。「ファイト・クラブ」いいでしょう、もう読んじゃいましょう。

太宰治は私が苦手とする作家ですが。この本を読んでいると、今なら読めるかもと思えてくる。ついでに「火花」も読んでみよう、って。一方、基本的に私は「ダメ人間」っていうのが嫌いなんだろうなとも思う。自分だけで充分だし・・・。そして「ダメ」=「依存」と言われると納得し過ぎて、ぐうの音も出ません。とか言いつつ、「ダメ人間小説の名手は決してダメ人間ではない」って結論に至るのが切ない。

(2016.4.20)
「下妻物語」、「パーナム博物館」なんかも本読みたくなりました。読んで楽しいブックガイドを目指したそうですが、本当に楽しかった。本好きが感想を語り合うって良い手法ですね。
関連記事


  • password
  • 管理者にだけ表示を許可する

trackbackURL:http://raffiner.blog70.fc2.com/tb.php/2798-defd1957

プロフィール

Author:彩月氷香

とにかく本が好き
読書感想がメインですが
時々、写真や雑記も。

*初めましてのご挨拶
*ブログタイトルの由来

<別館のご案内>
Instagram
99%、花の写真です。

moleskine絵日記
ちいさな絵日記。

表示中の記事

  • きっとあなたは、あの本が好き。 都甲幸治ほか
  • 2016年06月11日 (土)

カテゴリ

最新コメント

データ取得中...

月別アーカイブ

***