FC2ブログ
Loading…
 

『座右の名文』高島俊男

4166605704
文春新書

Amazon

「座右の名文」・・・遠い憧れ。

「ぼくの好きな十人の文章家」と副題にあります。

その十人とは。

新井白石
本居宣長
森鴎外
内藤湖南
夏目漱石
幸田露伴
津田左右吉
柳田國男
寺田寅彦
斎藤茂吉

うわぁ。5人しか読んでない!!
(森鴎外・夏目漱石・幸田露伴・柳田國男・寺田寅彦)

しかも好きかっていうと・・・
寺田寅彦と幸田露伴だけかな。
この二人も好きという割にはあまり読んでないし。

ひとことで言うと。
この方々の文章、現代人には読むのがしんどい気がする。

私は読むことに不自由しないと自負していますが。
読書の入り口が翻訳の児童文学だったせいでしょうか。
日本人の書いたものが苦手(おい!)な傾向にあります。

ま、原文で読んでないんで。
翻訳家が日本人ですし、日本人が書いてるとも言える。

ですから・・・日本人的な思考がダメってことか?
それって私の日本人としてのアイデンティティの危機?

などと、ふざけた脱線はこの辺にして。

本書はこの十人を手放しで褒めていないのが面白い。
幸田露伴など「一番駄作の多いのが露伴である」とひどい言われ様。

「文章の性格と著者の好みの相性の問題」とも書いている。

そう。べつに名文家を紹介しているわけではない。
著者にとっての「名文」を書いた人物を紹介しているのだ。

注目すべきはこの十人はみな学者であるということ。
高島氏、いわく。

いつの時代でも、学問の根底ある人の書いたものはおもしろい。よほどの天才は別にして、学問のない者の文章は底が浅くてあきがくる。

この後、なぜ学者の書いたものが面白いかの説明がありますが。
カンタンに要約しますと。

この方面のことなら知悉しているという自信が生む落ち着き、
どの方面を専攻したにせよ、ものごとの考え方を身につけている、
下等なことに興味を持たない・・・などの理由もあるだろうが。
文章を書き始める以前に相当長期の研鑽をつんでいることが大きい。

・・・っていうようなところですね、ハイ。

私も現代の好きな文章はこのパターンに当てはまります。
ええ・・・だから・・・要は、私には上記十人の文章は・・・
端的に言うと、「古い」んですね。

古びない文章ということは言われますけれど。
古典の勉強をしなかった人間には鴎外の文章は理解できません。
(私、古典の授業大嫌いでサボりまくってました)

不思議と、幸田露伴の「五重塔」はわかります。
いや。これはね、もの凄く、面白いし、衝撃を受けるかと。
大昔に読んだ時の私の感想は。
「凄い凄い凄い凄い凄いゾー」ですからね。

(未読の方はぜひ、読んで。後悔しません。たぶん)

ですが。著者は幸田露伴の「句」を中心に紹介。
あと、ものしり博士的な扱いですね。
とにかく、博学な人だったらしい。

読み進んで行くと。タイトルに偽りありというか。
「名文」が紹介されないんですよね・・・
もしくは、私には「名文」に見えて来ない。

著者の好みと私の好みがかけ離れているんですね。
あと、文章に対しての興味の持ち方も違うかな。

高島氏は、書き手の境遇や来歴に大変、関心をお持ちです。
確かに、面白いエピソードはあるのですが。

私は基本的に、著者の人物像に興味を持ちません。
これこれの背景があって、この文章が生まれたってところ。
なぜか、あまり知りたいと思わないんです。

おかげで。
紹介されていた作家を読んでみようとか。
紹介されていた本を読んでみようという気が起きず。

通常、この手の本を読むと。
読みたい本リストに30冊くらい追加されるものなのに・・・

そもそも高島氏が絶賛している柳田國男の「遠野物語」が大の苦手。
そこからも察せられるのですが。
苦手臭のプンプンする本がズラズラ並びます。

私。漱石の良さもイマイチわからない人です。
神格化されるほど凄い才能だと感じないのです。

自分の文学的素養が欠落してるのかと悩んだりもしますが。
ま、結局、単純に好みに合わないんでしょうね。
漱石を読むと、胃が弱い人の書きそうな文章だなと思います。

(あ、私も胃が弱いんだったわ)

「一番ツブがそろっていて、まず駄作というもののない」
・・・と、著者が評する寺田寅彦は例外的に好きです。

そうだな。寺田寅彦を再読しよう。
随筆集を全巻揃えよう(飛び飛びにしてか持ってない)。

あと。読まず嫌いしないという方針を復活させて。
斎藤茂吉(高島氏イチオシ)を読んでみよう。

この本自体は、なんだかんだ面白いんですよね。
個人的には森鴎外を紹介した章が好きです。
なんか、切ないな・・・鴎外の人生。

でも。白状しますと。
いちばん面白かったのは「あとがき」で。
この本がいかにして生まれたかというエピソードに。
とある女性への「お疲れ様」の気持ちが溢れて洪水になりました。

(2017.5.4)
知り合いから頂いた本です。面白かったです。
自分の読書の好みの偏りを炙り出されたのが、特に。
しかし、私の「座右の名文」は何だろう?
このタイトルで書けと言われても、今のとこ書けそうにない。

関連記事


  • 管理者にだけ表示を許可する

trackbackURL:http://raffiner.blog70.fc2.com/tb.php/3094-49e2f347

プロフィール

Author:彩月氷香

とにかく本が好き
読書感想がメインですが
時々、写真や雑記も。

*初めましてのご挨拶
*ブログタイトルの由来

このサイトはAmazonアソシエイトに参加しています。

表示中の記事

  • 『座右の名文』高島俊男
  • 2017年10月10日 (火)

カテゴリ

カテゴリー 月別アーカイブ

 

***