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本の読み方  草森紳一

4309019285
河出書房新社
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根っからの本好き、の凄まじさ

タイトルからすると。
こう読むのが読書の正しい方法、みたいで。
自己啓発ですか?って思ってしまいますが。

いーえ。
草森氏は、ちょっと(いや大分)頭がオカシイ、
超・超・超・読書家ですからね!

本の虫ってコトバは、彼のためにある。
私なんて、ほんと。比べたら虫じゃなくて塵だわ。
あ、違う。サイズの問題じゃないわ。

ともかく。
彼の読書ぶりは「狂気」の域。

たとえばですね。
若い頃にブラッドベリにハマった、というなら私も同じ。
太宰は大嫌いだけれど、ハマる人はハマりますよね。

それに関して草森氏はあっさり、こう吐露する。

太宰治の甘い毒から脱出するのには、全集読了と同時のほぼ六ヶ月ですんだ。ブラッドベリの毒をふり払うには、五年もかかった。

ええ。六ヶ月で太宰全集を読むのが凄いのかどうかは。
それ以外にも本を読んだのか、そのとき何してたのか。
条件によってはちっとも難しいことでもない気はしますが。

それでも、なんか凄みがあるんですよね。この何気ない一節。
本書全体は、軽いノリのエッセイの体なのに。
いちいち何だか、底知れぬ迫力を感じて唸ってしまう。

以下の文面も妙に新鮮かつ、納得。

 読書といえば、頭のみを使うと思っている人が多い。それは、誤解で、手を使うのである。本をもつのにも、手が必要である。頁をめくるにも、手の指がなければ、かなわない。読書とは、手の運動なのである。

これも、ここで終われば、ふうん、でありまして。
後に続く文章が、これは叶わない!という洞察の賜物なのだ。
(知りたい人は本書を読んで下さい)

こんなところも、いい。
 
 本がもたらす風情、風趣の中に、開いていた頁を「ぱたんと閉じる」というのがある。教師が、はい、今日はここまでとばかり、よくやる無情で、威丈高なしぐさである。
 だが、個人でも、だれも見ていないところで、そうすることがある。「ぱたんと閉じる」という一人芝居を打つ。ここには、乱暴なようで、本に対するいとおしさがある。

ありますよ!
私も稀に「ぱたんと閉じる」一人芝居、打ちます!
そういう時は。やはり、読んでいた本が特別なんです。
もしくは、読んでいた時の自分の気持ちが。

ええ。ぱたんと閉じた本、には。
「ぱたんと閉じずにはいられない」何かがあるんです。

本を自由に読める空間に生きていれば、本のありがたみなどない。

これなんかは草森氏じゃなくても言ってる台詞ですが。
私は身に沁みて、実感がある事実です。

なぜ私がこんなに本好きになったかという理由を辿ると。
その一つに「本を読むのを禁じられたから」ってのがあります。

普通はね。「本を読みなさい!」って言われるでしょ?
私は「本を読み過ぎる」と親にも先生にも注意され。
時には読書禁止令が出て、本を取上げられました。

本ばかり読んで、遊ばない。
本ばかり読んで、勉強しない。
本ばかり読んで、夜も寝ない。

で。「いい加減にしなさい!」と。

試験前は図書館に行くことを禁じられたので。
両親がスーパーへ買い物に行った隙に、
猛ダッシュで行って本を借り、ずっと家にいたふりをしました。

禁じられていたから。余計に読みたかったんだと思う。

さてさて。
橘外男の大ファンだという草森氏。
「太陽の沈みゆく時」という作品には
序文嫌いで知られる有島武郎が序文を書いているそう。

面白そうですね。読んでみたいな。

この本のの主人公は本ばかり読み、退校させられるそうで。
彼の独白にこんなのがあるという。

「馬鹿教師のご機嫌ばかりとつて教科書のことよりほかなんにも知らないやうな、あんな卑しい友だちなんかと話しているよりかも、一人で面白いものを読んでいた方がどの位気持ちよいか知れやしない」

ああ。共感。めちゃめちゃ、共感。
まさしく、学生時代の私は同じ考えでした。

リリアン・ヘルマンのエピソードも素敵。
大きな無花果の木の上で本を読んでいたのですって。
彼女はこの木の上での読書を「病の時」と読んでいたという。

しかし。「病い」=「病気」ではない。
「哀しみの予感のようなもの」を味わう時間、と述べている。

その「哀しみの予感」に彼女がつけた注釈がぐっと来る。

世の中にはあまりにも知らねばならないことが多すぎて自分の道をけっして見つけだせないだろうという最初の認識。そしてまた、わたしのような性格の人間にとって、その道は楽なものではないだろうという最初の暗示だったのだろう

こんなにも本好きの人がいるというのは楽しい。
何より、彼の本の読み方がとても、いい。
無性に本を読みたくなります。

(2017.10.10)
著者はさすが、膨大な書物を読んでいるだけあって博識。
けれども、それを自慢げにひけらかしたりしない。
どうだー、面白いだろー、とも言わない。
実に何気なく、ぽつんと文脈に織り込んでくる。
そこが楽しいし、カッコいい。でも気障でもない。
トボケた味わいだけれど、鋭い目線。
ほのぼのしているけれど、ドキリとする。
こういうエッセイは大好きです。
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  • 2018年03月05日 (月)

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