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暮しの手帖 2014年 06月号

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暮しの手帖社
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エッセイを読み込む

基本、眺めて癒される雑誌なのですが。
読み物としても、どうしてなかなか味がある。
特に、この号はなぜだか私の心に響く言葉がたくさん。

 今私たちは美しいものに命をかけることができるだろうか。逆に、美しと思えることを曲げてまで人に媚びることができるだろうか。美とは生活を純粋に質の高いものとして坦々と過ごすことである。どこにも手を抜かず、美しいと思うものにだけこだわって生きることである。現代の茶人であるデザイナーにそれだけの覚悟があるだろうか。自分の仕事に、美学に、命をかける人がいるだろうか。 
 毎日の生活において美学に命をかけると言ったら、それはずいぶん大げさなことに聞えるかもしれない。しかし、利休が過ごしてきたのも、我々と同じ「毎日の生活」なのではないだろうか。一日一日、ともすれば流されていく時間を、一瞬一瞬とらえて、どの瞬間も無駄にしないという覚悟。私たちの毎日も生活も、一瞬の積み重ねなのではないだろうか。

    深澤直人 「デザイナー 千利休の美の力」

ひそやかな暮らしを、今でもくっきりと思い出す。山の家での何よりの楽しみは、裏山にあった。一人でしゃがみこんで、草や木の実や花々を相手に一日中、全く飽きることがない。それどころか大きな幸福感に包まれて、毎日くまなく山を探索するのだ。この裏山での喜びと、老夫婦から大切な存在として大事に扱われた山の家で、私はとても幸せだった。

   黒川祥子「心の奥にある、あたたかな場所」

 若いふたりに心を残して、私は席を立ち、店をあとにした。
 帰り道のコンビニエンスストアで日本茶のティーバッグを購入し、ホテルの部屋で熱いお茶を淹れた。子供の頃からの習慣で、食事の最後に熱いお茶を飲むと、胃が落ち着くのだ。
 湯飲みを手に、先のふたりにこのお茶を届けられたなら、と出来もしないことを願う。そしてふと思い直すのである。作家なのだから、お茶ではなく物語を届けよう、と。生きにくい時代、一杯のお茶を届けるように、温かな物語を届けよう、と。

    高田 郁「作家の仕事」

 過去は、文句の言えない形で「これだ」と見せられるようなものではない。映像などで記録されていてさえ、人物の内面で起きた心の大事件みたいなものは捉えられなかったりもする。解釈は変化するから、同じ出来事への同じ人物の談話も十年前と今ではかなり異なることもよくあり、つまり過去は人物の内面で揺れ動き続けていて、形を持たない怪物のようでもある。過去の解釈は、本人が切実に感じているからこそ人生に院でいを与えるため、主観の記憶の何が真実かさえも重要ではない場面がある。有名無名を問わず、さまざまな方に取材で話をうかがううちに、この過去という確固たる形を持たず動き続ける怪物にこそ人間は振り回されたり、あるいは歩き続けていくための滋養をもらったりするようだな、と思うようになっていった。

   木村俊介「他人の過去に潜り込む」

 家族のなかでおぼえ、自然と身につけてきた言葉は、子どもが多くの時間を共有する友だちの選択にも大きく影響します。小学校の高学年に鳴る頃から、言葉によるコミュニケーションを基準にして、どのような友だちを選ぶか、同時に選ばれるかということが決まってくるのです。
(中略)言葉の質や内容は、その人の人柄や考え方を意味するものです。ですから、言葉尻を捕らえて問題にするようなしつけは、本質的には意味をなしません。

   佐々木正美「子どもと言葉づかい」

「セツ先生は、『おまえ達、何になってもいいんだよ。ただし、美のわかる人になりなさい。そのために、絵から始めてみたらいい』という考えの人だったの」

 生活全体が心地よく調和していること。それが星さんにとっての美だった。東京の雑多なおもしろさに憧れながら、気づけば日常にちりばめられた静かな美しさに引かれていったのだった。

 自分の本質は自分で見つけなくてはならない。それは孤独で厳しいプロセスだ。それでも人はそれぞれが独立した心をもって生きることが大切だと、星さんは思っている。人は独りだからこそ、互いを大切に思える。いや、人ばかりではない、窓の外から見える家並みが、街路樹が、いとおしく思えるのだ、と。

   星先生のレッスン(取材・文 渡辺尚子)

*星先生こと星信郎さんは、セツモードセミナーの元教師


どかどか引用しましたが。
共通するのは「美」への強い信頼。
そして、他人への優しさ。自分への厳しさ。

たぶん、それは一周回って。自分への優しさになり。
自分のなかにも「美」を見出すことなのでしょう。

(2017.11.19)
巻末の「編集者の手帖」も良かった。
編集長の松浦弥太郎氏の、読者への感謝とお願いの言葉。
もちろん、料理や手芸の記事も大好きです。
ていねいで、やさしい。切り口がやわらかい。
この号は、古本屋で見つけたら買おう。
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