FC2ブログ
Loading…
 

『羊をめぐる冒険』村上春樹

4061879324村上春樹全作品 1979~1989〈2〉
講談社
Amazon

かつて。何度も何度も読んだ本。

さようなら。
もう。読むことはないでしょう。
あんなに好きだった、この本。

久しぶりに読み返してみて感じたのは。
この本を愛読していた頃の私が若かったということ。

全集本を買い揃えようと思うほど好きでした。
海辺のカフカ以降の村上春樹は受け付けなかったけれど。
彼の過去の作品はずっと愛読すると思っていました。

そうではなかったみたい。
いや。読むのかな。10年後くらいに。

圧倒的な愛着を失って読むと。
それはそれで不思議に魅力と謎と暗示に満ちていた。
ただ。繰り返し読んでいた頃の自分を思い出すと。
もう。お別れしていい本だという気がした。

読んでいる私が妙に冷静だった。
冷静なら読めないとか価値がない本というのではない。

それでも。
若さを自覚していない若さ、を失ってみると。
かつてのような感動や満足は得られないのだった。

村上春樹流の表現は。
ある意味、だいぶ離れていてから読むと新鮮で。
しかし、時々うるさくも感じた。

通奏低音としてあるのは。
自己愛の強さだ。途轍もない強さだ。

そんな風に感じた自分にもびっくりしたけれど。
なんていうか、自分大好きと叫んでる感じを受けた。

それは。読んでいる私自身もそうだったのだ。

自己否定、自己卑下が強いというのは。
むしろ自己愛が強いことを示している。

いや。主人公はそういうことはない。
愛読していた頃の自分の話。

ズバリ、言いましょう。
比べるべきものがない魅力を持っていた頃でも。
村上春樹の描く主人公は、いささか幼稚だった。

それが悪いわけではない。
でもね。だんだん。こちらが年をとると。
そういう主人公と付き合ってはいられなくなる。

本当に。本当に。本当に。
かつて大好きだったから。哀しいけれど。
好きではい続けられないものも、ある。

生きるのがどうしようもなく辛かった頃。
村上春樹を読んでいると生きていける気がした。

希望を与えてくれるからではない。
希望を持たなくても生きていけると思わされたから。

スマートな諦念というか。
彼の口癖の「やれやれ」が表すように。
「ほんと、勘弁してくれよ」と思いながら生きていくこと。

まぁ。今も。私はその状況にあると言っていい。

自分自身に呆れつつ。
自分自身の生活習慣を頑なに守り。
大切なものを失い続けながら生きていく。

もっと、厳しいことを言おう。

彼の小説の主人公は。
無力でずるい自分を自覚していながらも。
「自分が特別である」という確信を失わない。

しかし、そのことを自分で語らず。
周囲にそれとなく「あなたは特別」と語らせる。

それによって読者も。
主人公に共感・同調しながら。
「私は特別」と信じることができる。
そのことを明確に意識をせずに。心地よく。

(2018.8.9)
村上春樹のファンの方が読まないことを祈りつつ。
かなり言いたい放題書いてしまいました。
私もファンだったし、ファンだったことを悔いてもいない。
好きだった頃の私が愚かだったとも思いません。
ただ若かったんです。若いことはそれなりに良いことです。
あと。彼の文体って中毒性がありますよね。伝染もしやすい。
大好きだった短編を読み返すか否か、悩むところです。

関連記事


  • 管理者にだけ表示を許可する

trackbackURL:http://raffiner.blog70.fc2.com/tb.php/3457-7d696a0d

プロフィール

Author:彩月氷香

とにかく本が好き
読書感想がメインですが
時々、写真や雑記も。

*初めましてのご挨拶
*ブログタイトルの由来

このサイトはAmazonアソシエイトに参加しています。

表示中の記事

  • 『羊をめぐる冒険』村上春樹
  • 2020年06月05日 (金)

カテゴリ

カテゴリー 月別アーカイブ

 

***