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『存在感のある人』アーサー・ミラー

by カエレバ

幾たびか、涙ぐむ。

短篇小説集です。
著者は劇作家として有名ですね。
かつてマリリン・モンローの夫だったことも。

そんなことは頭になく、聞いたことある名前だなと。
でもそういえば読んだことないよな、と。
例によって例に如く、軽い気持ちで読み始めました。

いい。
さりげなく、何気なく、上手い。
心の隙間にスルリと忍び込む、憧れや怖れや悔いなど。
閃くように描き出す。一瞬、暗闇に浮かび上がるように。

痛切でもあり、残酷でもある人生を。
そのままに。救い出すことはなく描写しているけれど。
筆致なのか、目線なのか、洗練されていていて。

劇作家だけあって。
何だろう、型が綺麗。
美しい泳ぎを見ているような。
もしくは、歩く姿の美しい人に出会ったような。

最晩年の作品だそうで。
それなのに老いは不思議と感じない。

『パフォーマンス』
『テレビン油蒸留所』

この二作が特に好きです。
どれか一つ選ぶならば、後者かな。

私が傑作短編集とかを編むことでもあれば。
絶対に収めたいと思うくらいの作品。

何がこんなに胸に迫るのだろう。
著者はあまりにも「見え過ぎている」人だ。
もっと鈍感である方が幸せに生きれるのに。

でも。見えてしまったものを。
このように表現できるのなら。
本人にも、彼の同類にも救いになる。

それでも現実は変わらないけれど。

気づいているよ。
気づいてしまったよ。
気づかないふりをしようとしていたけれど。

それでも。
気づいたことに祝福されているのかもしれない。

無粋なことだと思いつつ。
心惹かれた箇所を書き写しておきます。

「資産目録の最後の品目」と彼は過ぎていく時間や週のことを呼んでいた。彼は時間にとりつかれるようになったが、それは必ずしもいいことではないと自分に言い聞かせていた。

心のなかでうごめいている光、何か新しいものを想像する力を持つ光を、ほとんどの人々は掴めずに終わる。

彼の沈黙は一種の哀悼の表われだ、とレヴィンは気づいた。自分の人生よりもはるかに大きなものへの哀悼の念。

彼はダグラスを愛し、自分も同じくらい無鉄砲に振る舞えたらと思った。アデルと一緒にシューベルトを演奏したい。そう思いつつ眠りに落ちていく。ホテルにはピアノがあるかもしれない。そのピアノの前にアデルと並んで座り、一緒に演奏する———そんな想像に耽れるかもしれない。ホテルのフロント係に訊いてみよう。アデルの香水が匂ってくるような感じがする。彼女があのタンクを永遠に見ることがないなんて、何ともおかしなことだ。

最初のだけが、表題作『存在感のある人』からの引用。
あとは全て『テレビン油蒸留所』から。

(2018.1.8読了)
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  • 『存在感のある人』アーサー・ミラー
  • 2019年02月24日 (日)

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