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『水彩画 小さな光の音楽』あべ としゆき



原画を見たいなぁ・・・

繊細で、精密で、透明感があって。
最初に受ける印象は「本物そっくりの風景画」。
写真と見紛うほど、写実的でもある。

でも。色が違う。
いや。色も実物に即したリアルな色だけれど。
画家の目を通した色だということがわかる。
描き手に表現したいものがあることが伝わってくる。

それは何なのだろう。

本書に収められた画家自身の言葉から知ることができた。
「見えない美を信じる」というタイトルの短いエッセイ。
全文引用したいくらい共感したのだけれど煎じつめるならば。

声高に語らぬ美を愛し、
そのような美を静かに守っている人々が
ふと足を止めてくれるような絵を描きたい、
それが目標だと。

その想いが体現できている絵だと思う。

どれも、どこかで見たことがあるような光景で。
懐かしいとも、平凡とも取れなくもないが。
何か特別で尊くて大切なものを思い出させてくれるような。
当たり前に感じているものの美しさを教えてくれるような。

そうだ。光があった。
そうだ。風が吹いているんだ。
そうだ。せせらぎが聞こえる。

静けさの中にすーっと。
見ているうちに吸い込まれていく感じがする。
そしてその静けさが実はとても賑やかで華やかで。
新鮮で清らかで楽しいと知らされるのだ。

澄み渡った優しさ。
とても気持ちの良い絵。
光の差し方が特に美しい。

コラムがいくつか収められています。
そのうち、とても心に響いたのが以下のもの。

(長くなりますが全文引用)
「見えない美を信じる」

 私はニュースや新聞、週刊誌が苦手だ。もちろん正しい情報を届けてくれる場合も多いのだが、あまりにも悲惨な出来事や憶測と偏見で曲げられた言葉に心が痛むからだ。声には出さないとしても、私と同じように今の報道の在り方に心を痛めている人は多いのではないかと感じている。実際に起こっていることにも、そしてそれを過大に拡散するシステムにもやりきれない気持ちになる。そっとしていれば解決する問題が報道や情報により複雑になり大問題に発展していくことは少なくない。今の時代は簡単に情報を集めることも発信することもできるが、本当に知るべきこと、知らなければならないことはどれくらいあるのだろうか。紙面があるから、時間枠があるからというだけで小さな出来事が大きく報道されている事が多すぎると感じている。
 また、一方で情報として流れていることがこの世界のほんの一部でしかないことも私は知っている。本当に美しい心を持った人、本物の良識ある人は、決して自らそれを表に出すことはないからだ。私はきちんと自分の役割を果たしている人が好きだ。目立たなくても誰かのために誠意を込めて働いている人たち、人知れず周りに優しくしている人たち、立場の弱い人を守ろうとする人たち、心の美しさを無くさないようにしている人たち。そんな人たちがニュースにも話題にもならず、お互いに出会う事もなくこの世界にひっそりと暮らしていることを私は信じている。山道の近くに咲いている花を見ることはできるが、道のない山の中に咲いている花を見ることはできない。でもそんな場所に咲いている花は、多分本当に美しい。私は芸術のために絵を描いているのではない。おそらくは出会うことのない、そのような心の美しい人たちが、ふと足を止めてくれるような絵を描く事。それこそ私が目標としていることなのだ。


(2019. 4.1 読了)
あべとしゆきさんのカレンダーが発売されていた!今年の!
知っていたら買ったのになぁ・・・残念。

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  • 『水彩画 小さな光の音楽』あべ としゆき
  • 2019年10月18日 (金)

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