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『猫と庄造と二人のおんな』谷崎潤一郎

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新潮文庫
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リリーという猫の、なんと全き猫らしさよ。

ひらりひらりと身をかわして、
人間の愛情なんて鬱陶しいと言わんばかりにツンと澄まして、
そっぽを向いた次の瞬間には、するするっと、
身のこなしの優雅さを見せつけながら近づいてきて、
あなただけは特別、という顔つきでじーっとこちらを見つめ、
ゴロゴロと喉を鳴らして甘えかかる・・・。

そんな様子が目の前に、くっきりと浮かび上がる。
あでやかに生き生きと、息を呑むほど、見事な描写。

そのリリーを溺愛する庄造という、しょうもない、
あかんタレな男と、その男に捨てられた可愛げのない元妻、
身持ちの悪い若い新妻、計算高い庄造の母。

この人間模様、ぷんぷんと谷崎文学の香りを放ちつつ、
彼の作品の中では珍しく、のびのびと柔らかい空気を纏っている。

魔性と言われる猫にも似た、魔物めいた香気を持つ文章の魅力は、
この作品にも健在ながら、「春琴抄」や「痴人の愛」「細雪」などの、
ねっとりした豪奢さとは異なり、まろやかな愛らしさに包まれている。

道端に寝転がる猫の目線で地べたに近い世界を描いても、
高貴さを漂わせてしまうくらいの、谷崎の卓越した文章力に、
私は酔いしれながら、感嘆することしきりに、幾度も幾度も、
深い深いため息をつきながら、読んだ。

しなやかで艶やかで、けれどすっきりとした仕立て、
という極上の文章が精緻に紡ぎだすものが、
美とは遠く離れた凡庸な人間模様であるという皮肉。

ゆえにこそ、
人間のズルさ、浅ましさが、哀れにいじましくも見えてきて、
ほろりと優しい気持ちになれるのかもしれない。

(2010.9.21)
「すぐ読めて満足感あり」のお題に寄せて頂いたなかの一冊。
空花さん、素敵な出会いをありがとうございます。


こんばんは☆氷香さん。
『猫と庄造と二人のおんな』を読んでいただいて、
ありがとうございます。

お忙しい中、おそらく一度読まれただけで、
これだけの感想を書くことができる氷香さんの鋭い感性には、本当に脱帽です。

自分が大切に思っている本を人に紹介するということは、
少し勇気が必要なことだったりします。
相手がその本をいまいちだと思ったら、
ちょっぴり残念ですからね☆

今回は、『氷香さんならきっとこれ!』、というものを選んだのですが、機会があれば今度は、はずすことを恐れずに、思い切った本を紹介してみたい気がします(笑)。
2010.09.30 19:53 | URL | 空花 #- [edit]
谷崎潤一郎の作品のなかでも一番好きかもしれない、と思ったくらい、
一読して、心から気に入った作品でした。
・・・一目惚れならぬ、一読惚れ?(笑)

まぁでも、他の作品も、勿論それぞれの良さがあって捨てがたいので、
勢いで、そう宣言しちゃうのはマズイ、とぐっと堪えたのですが。

大切な本を紹介するのは、勇気がいりますよね。本当に。
すごく、よくわかります。それだけに、一層、嬉しいです。
紹介してくれた方の気持ちが、何よりの贈り物なんですよね。

調子にのって、また違うお題で、募集したくなりそうです(笑)
空花さんの他の大切な本も、いつか是非、教えてもらいたいです。
2010.09.30 20:25 | URL | 彩月氷香 #- [edit]


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  • 『猫と庄造と二人のおんな』谷崎潤一郎
  • 2010年09月30日 (木)

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