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女の足指と電話機―回想の女優たち  虫明 亜呂無

2010.11.19 未分類   comments 3
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清流出版
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タイトルから、映画の話、だとばかり。
スポーツや競馬や、宝塚の話も登場して意外だった。
本や、舞台、著者の思い出話も、時々混じる。

それでも映画の話がメインには違いなくて。
それは、独特の鋭い視点とエロティシズムを醸し出す文章で。

特に女優を見る目、描く筆致が卓越している。
ただ、残念ながら、「女性失格」という自覚のある私、
男性である彼よりも「女」というものが理解できていない。

彼の名言の数々に唸りつつ、実は共感していない。
彼が見事に「女」を演じきっているとか描いているとかいう、
その女優も映画も、私は間違いなく、苦手なのだ。

いや、好き嫌いでなく「女」とは、このようなもの、かもしれぬ。
だとしたら・・・私は「女」ではない。

虫明氏を非難しているのではない。
わからないながらも、面白かったし。
彼の美意識の在り様には好感を持った。

女を理解できない私に、女の解説をしても無駄というだけ。
これは、もうどうしようもないことなのだろう。

私は、フランソワ―ズ・サガンもマルグリット・デュラスも、
エミリ・ブロンテも理解できない人なのだ。
つまり、ある種の女らしさが完全に欠如している。

はっきり言って。
女らしい女、「これぞ女」という女が、かなり苦手である。
絶対に、彼女らは、私とは違う生物である。

しかし皮肉なことに、私は私を未知の人に紹介するのに友人が
「ザ・女性」と言ったくらい、一見は女らしいのだ。
自分で言うのもなんだが、「女らしさを絵に描いたみたい」な
タイプなのだ・・・やれやれ。

ま、女といっても色々あるだろう。ということにしとこう。

などという個人的趣味(主義?)故に、氏のおっしゃることには、
どうも、しっくりと馴染めずに読んでいたのだが・・・
それでも、非常に読み心地良く、楽しい本だった。

酔わせる文章。いい具合のクセもあり、それが味わいになっていて。
もはや、何を書いてるかとか、その意見に同意できるとか、
全然、どうでもいいと思えてくる。

非常に感性が鋭くて、それが流麗とも端正とも違う、
いやそのどちらでもあるようでいて、そういうわかりやすい美を
感じさせない境地に達した散文を生み出していて・・・。

「いちばん憎んでいたものを、いちばん美しく書いてみせるというのが三島氏の特徴なのである」

私はこの一文に、ハッとした。この短い言葉に三島由紀夫の真髄がある。
なんて、見事な・・・いつも私が感じていて言い表せなかった印象を、
こんなに易しい言葉で言い尽してしまうなんて・・・。

エミール・ギレリスのピアノ演奏についての文章にも息を呑んだ。
言葉を失うくらい鮮やかに、私の感じたことが再現されていた・・・。

本書を読んでいると、「退廃の美」という、現代において死滅したものが、
ふいに懐かしく思い返され、その魔の陰りの残り香を感じた。
そして、「病める健やかさ」という、矛盾した言葉が
ふと、どこからともなく、浮かび上がってきた。

・・・うん、この言葉、何だかとてもしっくり来る。虫明氏のイメージに。

この人の文章は、もっと読んでみたい。

(2010.11.13)
何よりも、著者の三島由紀夫に対する理解の深さが印象的。
ほんの少ししか触れてはいないのだけれども・・・。
氏が「三島の生涯において、ターニングポイントとなる作品だった」と語る、
「午後の曳航」を今すぐ、読み返したくなりました。


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このコメントは管理人のみ閲覧できます
2010.11.19 19:35 | | # [edit]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2010.11.20 09:39 | | # [edit]
クスリ、ホロリ。笑って、涙ぐんで。
鍵コメ様の優しさに、心のエネルギーを充電させて頂きました!
・・・ありがとうございます。
2010.11.20 10:16 | URL | 彩月氷香 #- [edit]


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  • 2010年11月19日 (金)

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