「三月は深き紅の淵を」というタイトルの本がある。
作者不明の自費出版で転売禁止、人に貸すときは一晩限り。
その、謎に包まれた寄稿本を巡って、4つの異なる話が展開される。
洒落た謎ときかと思わせて、徐々に不気味な色彩を帯びてくる。
何が現実なのか、読者を撹乱するように、物語は時には重なり、
また、ズレて横滑りし、ぐるぐると踊るような足取りで紡がれていく。
初・恩田陸だったのですよね、この本が。
はっきり言いましょう。チョイスミスでした・・・。
他の本を読むつもりだったけど図書館になくてね、
何となくで選んじゃったんです。
4部構成の、第3章までは、面白かったんですよ、すごく。
夢中で読みましたもん。奇妙な味わいと微妙な毒々しさも、
私はかなり好きな感じでしたし。
ですが、第4章でぶちこわし~。
やり過ぎです。私の勝手な意見ですけど。技巧を凝らし過ぎ。
ヘンな話や、ワケわかんない話が得意(!?)と自負してる私も、
ここに来て、ついていけなくなりました。
あーあ、どうして、そういう方向へ進むかなぁ・・・。
作者もどきを作中に登場させる、ってパターン、キライなのよ。
しかも、全然違う人の視点と並行するってね、最悪!
まったく物語世界に入って行けなくなり、
すっかり現実に戻ってきちゃいましたよ・・・。
で、イライライライラ・・・。
せっかく楽しく読んでたのに、著者から水を浴びせられるとは。
あああ興ざめだ~~!!!
なんで、こんなに、ぶっ壊しちゃうのぉぉ。
おぼろに著者の目指すものとか、意図がわからないではない。
要は、物語を永遠にしたかったのよね?
でも、明らかに~失敗だからっ!
ぜぇぜぇ、ハァハァ。お、落ち着こう。
ま、いいです。恩田陸のテイストは、何となくわかりました。
違う本でリベンジします。たぶん、結構好きだと思います。
さりげない心理描写の巧みさ、本にまつわる蘊蓄の豊富さ、
妙なところ(!)で力が入る感受性の発露・・・いい感じです。
文間から、彼女の多読っぷりが窺えるのも読みどころですね。
私だって負けるもんか~。(何故そこで対抗意識を燃やす?)
・・・と、しっかり文中に登場した、私が読んでない本を
チェックして、「読みたい本リスト」に追加しました。
えー。ちなみに。
マーク・マクシェーン「雨の午後の降霊術」
ジョン・ファウルズ「コレクター」
ロレンス・ダレル「アレキサンドリア・カルテット」
植草甚一「雨降りだからミステリーでも勉強しよう」
最後のは読んでますが。再読したいなぁと。
余談ですが、解説が皆川博子さん。なんとまぁゴージャスな。
(2010.11.30)
どーでもいい話ですが、本書の中に私の本名と同じ名前の人が
出て来まして。いや、ちょっとビックリしました。
私の名前、かなり珍しいので・・・といっても、著名人や
文化人、芸能人に稀には存在するんですが、小説に登場したのは
今回初めて見ました。現実にも同名の人に会ったことないんです。
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