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『気まぐれ美術館』州之内 徹 

4101407215
新潮文庫
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タイトルから、美術評論か、それに類するエッセイだろうと、
大抵の方が、想像するだろうと思う。

しかし、洲之内氏の文章は、それこそ気まぐれで、
そもそも、絵の話にはなかなか、到達しない。

ご本人は、一応、絵について語ろうという心づもりはあるのである。
なのに、山荘を見知らぬ人にプレゼントされた話やら、
雪の街での出来事やら、偶然見た交通事故の話が延々と続く。

それでいて、ふっと、いつの間にか、絵の核心に触れている。
面白くも、羨ましい・・・この自由自在さ。
洲之内さんの気まぐれな散歩にお供するのは、とても楽しい。

当たり前に絵を楽しむ、その感覚が好ましい。

*以下、長すぎる本の感想でない文章となります。
お気付きかと思いますが、私の脱線グセも相当なもので、
この本の感想を頭の中で描いていると、なぜか、本に付箋を貼る、
自分の癖に関して(その流儀など)まず、語り出し、

次に、展覧会で観る絵と、売り買いされる絵の違いについて、
独自論(ってほどのものでもない)をぐだぐだ語り、

さらに、百貨店の外商部勤めの頃、見せてもらった2千万円の絵、
に関するエピソードを延々と語り続け・・・、

次に、佐伯祐三との出会い(何故かそれは、鴨居 玲展でのこと)に
話が移り・・・と言うのもその2千万の絵が荻須高徳のものだったからで、
(荻須高徳と聞くと佐伯を思い出すのは私だけの事情かもしれぬが)

ついでに、大阪市立美術館の展示センスへの罵詈雑言が加わり、
・・・というのも、鴨居 玲展が開かれたのがそこだったからで、

しばし、佐伯祐三の思い出に脱線したがために、芦屋を訪れた記憶が甦り、
そこに谷崎潤一郎もゲスト出演し、芦屋から御影の散歩話へと、
さらに脱線するのを何とか踏みとどまり・・・、

絵を見て涙が浮かぶ、その思いを自己分析しながら、
(私は佐伯祐三の絵を見るたびに泣くのである)
歴代の私が泣いた絵(焼き物もある)を順に思い浮かべ、

そうこうしていて、自分が一番最初に「絵」を観た記憶へと
流れ着く・・・という始末だった。

ちなみに、以前もどこかで(とある海外ミステリの感想)語ったが、
それは6歳の時に、母に連れられて行った、ベラスケスの展覧会である。
マルガリータ王女の絵に魅了されたが、数ある中で、どのバージョンか、
今ではわからない・・・青でなく、朱色のドレスだったが。

正直、絵など、わかってはいないので。観方もいい加減なもので。
色も形も整ったものが、基本的には好きなのであるが、
どうも、そういう観点から行くと「歪」なものを見たときに、
訳もなく涙が出てくる傾向はあるようである。

いや、形が整っているものでも・・・泣いたことはある。

で、そこで私は別に泣き虫ではないのだという言い訳のための実例を
幾つか、誰も聞いていないのに展開し・・・。

絵を買うことを考えたときに、先日観た「ハーブ&ドロシー」のことを
思い出し・・・しばし、絵を買う意味を考え続けて・・・、
(この映画はアメリカの裕福ではない夫妻が現代アートを買い漁る実話)
そこから道をそれて、自分が現代美術を理解できるか否かを問い、

そこで学生時代に、月に3回だか、一学期に5回だか、回数は忘れたが、
決められただけ美術展へ行きレポートを書かされた思い出を振り返り、
・・・というのも、そのレポートを書くために、やむなく、
苦手な現代アートを観に行ったことが何度かあったからで、

そして、どうやら無理やりに観た値打ちはあったのか、
まったく現代アートが理解できなくもないということに気づき、
とうに処分した、その展覧会ノートに、幾つの、どんな展覧会が、
記されていたろうかと回想し・・・。

尽きることもなく、話が広がって行き、しかも、これは概略のみ、
枝葉はカットしてあるわけだから、実際は、そこに「人」の、
思い出も多数、絡んでいる。もちろん場所、も。

絵を絵だけで語るなんて、無理なのである。
本を本だけで語るのだって、実は、ほんとうは無理である。

私はいつも、その無理なことを実行しているわけだけど。
ああ、洲之内氏が羨ましい。つくづくと、羨ましい。

というわけで、控え目に(?)真似して、
本の感想を語らずに本の感想を書いてみた・・・。

まぁ、感想には、まったくなっていない。
開き直って付箋の話に戻ると、この本を読み終えたとき、付箋が、
34枚、挟まっていた・・・そして。

付箋が大量に挟まった本の感想を、私はまともに書けたことがない。

(2011.1.17)
私などは、知らない画家がたくさん出てきます。
観る機会があるならば観てみたいと思う画家たち・・・。
佐藤哲三、斉藤和雄、松本俊介、古茂田守介、ケーテ・コルヴィッツ。

個人的に自分の思いと重なるのは、アンドリュー・ワイエス。
(これも私が泣いた絵でありまして・・・)。
岡鹿之助も、ささやかな奇縁のある画家でした。
あと、浅草のアンジュラス、行ったことあります!
洲之内氏が森鴎外を語る場面も、非常に印象深い。

こういう本は、持っていて、愛読するに限ります。
感想なんて、書かなくて、いいのだ!
という、こんな私の感想を読んでしまった方、ごめんなさい。

この本は、さるお方が勧めてくださったのですが、
そのご縁を嬉しく思います。ありがとうございます。

ちなみに。本気で洲之内氏のマネをいたしましたら、
本文は、30倍くらいの長さになると推測されます。

その、つらつらと頭の中で散歩をするのが、
楽しく、心地よい、そして、でも妙に甘苦い、
奇妙に満ち足りつつ、不安定にグラグラする足元を、
笑いながら見下ろしているような、そんな時間なのでした。


関連記事

これは自分だけのことだとは思うのですが、
展覧会で好きな世界有名(定番)画家の作品に触れても、
不思議と記憶には強く印象が残らないのです(なぜかなぁ)。
鑑賞の仕方、あるいはその時の気ぜわしいまわりの状況が、
災いしているのかも。
入り込めたのはセザンヌやクレーのいくつかくらい・・。

ワイエスは20年ほど前にヘルガのものを集めた展覧会を観ました。
あの精緻に描写された静謐な世界・・実物はどんな風なのだろうかと思っていましたが、
顔を近づけてみると(愚行)、意外とラフな画筆(筆跡?)でした。
ああいう絵画はもっと広い静かなところで観るべきものですなぁ(でも、すばらしかった)。

自分の良い記憶に残った展覧会は、巨匠ほどの知名度はない画家(失礼)のもの、
ハンス・エル二やアンドレ・フランソワ(イラスト)の展覧会でした(愉しかった・・)。

鴨居 玲のあの不気味なようなゴツイ(?)絵・・実物は凄い迫力でしょうなぁ・・
自分は画集でしか知りません(松本俊介の絵もまた同じ)。
コルビッツの版画展・・昔観る機会があったのですが、都合で行けず(残念)、
あの木炭でごしごし描いたような力ある画、自分も好きです。
2011.01.21 12:10 | URL | nao #6gL8X1vM [edit]
世界有名(定番)画家、が何故だか、ちっともピンと来ないこと、
きっと、本当は、多くの人にあるはずだと思います。
名画だと思い込んでるから、名画に見えるんです(笑)

私の好みは平凡ですので、まぁ世間一般に良いと言われるものは、
一応、大抵「良く」は見えますが。「は?」と思うのも数々。
何故か、有名な画家でも、有名でない作品が好きな傾向があります。

有名な絵画は、有名だという理由だけで鑑賞に来る方が多くて、
失礼ながら、その周囲の空気が汚染されてる(言い過ぎですね)、
ということを私も時々、感じます。

それすら、突き抜けてくる輝きのある作品もありますし。
残念ながらそうではないものも。相性やタイミングもあります。

好きな絵を、しつこく観る性格のため、同じ絵を、
違うシチュエーションで何度も観ることがありますが。
展示場所の空間、光の当たり具合、展示のセンス、会場の状況で、
同じ絵でも、感じるものがまるで違います。

だから、下手糞な展示に怒りが湧きます。
絵を台無しにして、その絵と出会う人の感動を殺いでいる、と。
まぁ・・・観る側の心境のせいもありますから。
あまり、状況にばかり責任を負わせても、酷というものですが。

幸か不幸か、いざとなったら、自分と絵だけの世界に、
没入しますから!大丈夫!・・・でも自分のコンディションが
悪いと、環境に負ける・・・悔しい。

アンドレ・フランソワ、私は絵本しか観てないですけど、
きっと好きですねぇ。実物の方がいいだろうなと思います。
鴨居玲は、ほんと、迫力ですよ~。ずしん、と来ます。
でも、なんとも哀しいんです。20年くらい前ですね、観たの。

クレーは、一度、とてもいい展覧会に巡り合いましたが。
セザンヌは好きだと思うのに、うまく出会えてません。
日本でなく、ヨーロッパの美術館で観たい絵画もありますね・・・

生きてる間にいったい、どれだけの絵画が観れるかしら。
贅沢な、悩みかもしれません。
絵が呼んでいると感じるとき、機会を逃さずにいたいものです。

あ、でも実は、心に残るものの中に絵以外のものも多く。
名もない陶器とか、あと、江戸時代の小袖は胸が震えました。
禅僧が書いた書も、有名書家のより、心を打つものでした。
2011.01.21 18:04 | URL | 彩月氷香 #- [edit]


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  • 『気まぐれ美術館』州之内 徹 
  • 2011年01月21日 (金)

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