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愛のゆくえ  リチャード・ブローディガン

4151200215
ハヤカワepi文庫
Amazon


世にも不思議な、図書館に住む男。
現代風に言えば、「ひきこもり」と称せそうな、
ほぼ外へは出ない暮らし。

そこへ、現れた一人の魅力的な若い女性が、
彼を外の世界へと連れ出すことになる。

互いが互いを救ったかにも一見感じられつつ。
私は、「居心地の良い孤独」を失った主人公が、
実は幸せではないのでは、と思った。

愛は美しくても。
魂の中の何かを犠牲にする。
これは、個人的見解なので、大きな声では言わないが。
「孤独」の力を私は強く信じている。

堕胎というテーマが、いったい、どこに吹っ飛んだかという、
あっけらかんとした・・・詩的な叙情。
意識するものとしないものを、人間は選べるという贅沢。

現代的なお伽話のような、楽しいリズムとゆらぎと、
小さな残酷と、美しい言葉の旋律・・・

大好きといえる、世界観。
ただ、あまりにも村上春樹に似ていて。
いや、村上春樹がブローディガンに似ているのだろう。
そのことの衝撃が、ずっと尾を引いていた。

村上春樹を初めて読んだ時、その「新しさ」に打たれたのだが。
明らかに手本としたものが、ここにあると思った。
それは・・・正直、少なからぬショックだった。
口の悪いヒトなら、「パクリ」というくらい、似ている。

もちろん、その後、進化していった部分もあり、
言葉の繊細さの方向性は、微妙に違いはするけれど・・・。

スタイル、人物像、言葉のセンス。文体。
「村上春樹が、外国人のペンネームで書いたとしか思えない」と、
amazonのレビューのなかにあったけれど、私もそう思った。

それが、悪いというのではない。ただ、そうとしか感じられなくて。
そう感じるというだけで、どうにも居心地が悪いのだった。
もし、先にブローディガンを読み、そのファンであるとしたら、
私は、村上春樹に怒りすら感じた可能性がある・・・。

そんな自分の心が狭いのか?と問うてみる。
誰だって、何らかのルーツ、影響は受けていて当然だと庇ってみる。

それにしても。それにしても。
こんなに似ていてもいいものか?

スタイル、ディティール(小物の使い方など)の影響を深く受けても、
やはり描くものは、思想は異なってはいると思う・・・から。
それでも、なんだか、やっぱり、悲しい。

こんな感想でごめんなさい。
村上春樹ファンの人にも、ブローディガンファンの人にも、
なんだか申し訳ない気持ちになりますが。

単純に、好き、というのは難しい本です。
この独特の世界観には、魅了されますが。
村上春樹との類似に気づかされる瞬間が多すぎて、
私は、気が散って仕方なかった・・・。

そのくらい、村上春樹を読み込んでいた、ということでもあり。
なのに、近年の村上春樹作品を読めなくなっている私としては。
何やら、気持ちが、ぐじゃぐじゃになってしまいました。

ここで、思い切っていいますが。
「海辺のカフカ」を読んだとき、私は絶望したのです。
何様?と非難されようとも、私の中では、あれは、駄作。

私が勝手に悲しくなっても。
作家は、自身の思いと信念で執筆しているのでしょう。
読者として期待する「型」を持ってしまう間違いを、
たぶん、私は犯しているのかもしれず。

でも、著者の意図など追いたくはないのだ、別に。
自然に、自分の心に響いてくるかどうかというだけの問題で。
それがなくなったとき、淋しくても私にとってはお別れのとき。

「IQ84」
ずーっと、読むか読むまいか悩み続けている。
たぶん、読まないだろうと、思う。きっと、「評価」はできる筈で。
でも、やっぱり「失望」し、それを一生懸命、様々な理屈で、
カバーするだけになるのだろうと・・・ほぼ確信を持っている。

そんなこと、読んでみてから感じたり考えたりすればいいだろうし。
予測が裏切られる可能性だって無いわけではないけれど。

今、読みたくない、という私の気持ちにも、意味がある。
たぶん。その思いの強さに、逆らう必要を私は感じない。
そのくらいの我儘は、許されてもいいだろう。

そう思いながら、後ろめたく感じるのは何故だろう。

面白いか、面白くないか、だけで判断できないとき、
「死んでしまった人の本」だけを読みたいと思ってしまう。
作品の背後に見える著者が生きていることが、
読者として重荷だなんて言ったら、笑われるだろうか。

リチャード・ブローディガンは、ピストル自殺をした。
自宅で・・・すぐに発見されず、正確な死亡時期は不明。

(2010.1.14)
「すぐ読めて満足感あり、」な本シリーズの中の1冊。
紹介してくださった速読おやじ様、ありがとうございます。
それにしても・・・こんなワケのわからない感想でごめんなさい。
素敵な本で、決して楽しんで読めなかったという訳ではありません。
ブローディガンは、また読んでみたいと思っています。


ブローティガンの小説の中で、最も好きな小説です!(鱒釣りよりも)
あと「鳥の神殿」も良かったなぁ・・。
ヴィアン「うたかたの日々(日々の泡)」などとともに、
(あと長田弘「サラダの日々」「ねこに未来はない」なんかも)
特別なものを残してくれた小説でした(自分は新潮文庫版で読みました)。
久しぶりに読み返してみようかなぁ・・少し恐いような。

村上春樹の小説は、もうかなり前に(自分には)終わってしまっているのですが、
(翻訳家としての力量の方を、高く高く買っています)
最初期の三部作は大好きです。
2011.01.20 21:02 | URL | nao #6gL8X1vM [edit]
彩月さん、

読んでくださったのですね。
それに長い感想もありがとうございます。

私が読んだのは村上春樹に嵌っていたころだったので、すーっと文体が入ってゆきましたね。細かい内容は覚えていませんが、この小説にinspireされて、図書館を舞台にクリスマス・ストーリーの短編を書いた思い出があります。あれ、どこに行ったんだろう??

村上春樹の初期の文体は、他にもカート・ボネガット・ジュニアの浅倉訳のパクリだって言われてましたしね。ブローティガンにも相当影響を受けていたんだと思いますよ。

ブローティガンは、また別の作品だと全然雰囲気が違っていましたよね。私も時間があれば読んでみます。

>面白いか、面白くないか、だけで判断できないとき、
>「死んでしまった人の本」だけを読みたいと思ってしまう。
>作品の背後に見える著者が生きていることが、
>読者として重荷だなんて言ったら、笑われるだろうか。

これは、そうかもしれませんよ。
それだけ彩月さんが小説を深く読んでいるからじゃないでしょうか。
小説は作品となったときに著者から切り離されているという考え方も理屈としては分かりますが、やはり背後に著者がちらちら見えますものね。

小説を愛しているからこそのコメントだと思います。

寒いソウルから戻ってきました。
羽田からオフィスに直行。。。疲れた体に鞭打って仕事!仕事!
でも、もう終わったので今から帰りまーす。
では。
2011.01.20 21:15 | URL | 速読おやじ #JyN/eAqk [edit]
では、次回は「鳥の神殿」を読むことにします~

ヴィアン「うたかたの日々(日々の泡)」、思い出深いです。
村上春樹は最初期の三部作が好き、というのも同じです。
nao様とは、びっくりするくらい、趣味が似てるかも!?

うん、特別なものを読み返すのは、ちょっと怖いですよね。
あの感動が幻だったら?若さゆえの勘違いだったら?って。
実際、読み返して、どうしてこの本にそこまで肩入れしたのか、
謎な場合もあったりして・・・。

それは、自分のなかで何かが失われたからなのか、
それとも成長と捉えたらいいのか・・・どちらにせよ、淋しい。

村上春樹は、私は翻訳家でもなく、小説家でもなく、
コラムニストもしくはエッセイストとして今も(好きです。

あ、長田弘さんは、読みそびれている!読んでみたいです。
(か、他の著作を読んでて、忘れてるのかもしれない)
2011.01.21 09:34 | URL | 彩月氷香 #- [edit]
おかえりなさい!
ソウルは、やはり、寒いのですね。お疲れ様です。
やはり、ここは、ワイルドワイドな仕事ぶりに拍手!(笑)

図書館を舞台にしたクリスマスの短編、面白そうです。
読んでみたいなぁ。見つけたら、是非、公開して下さい~

グダグダな感想に、心優しいコメントありがとうございます。

いつもいつもでは、書く側も読む側もしんどいけれど、
時には、生身な感想を吐き出してしまうことを、
自分に許してあげないと、ブログを続けるのが、
いつかしんどくなるのでは、と思って・・・。

きれいにまとめて、心中を押し隠すことも、
できなくはなかったのですけれど。
不安ながら、愚直に正直に書いてみました。

大顰蹙を買った様子もなく、今ホッとしています。
良き読者さま方に恵まれ、幸せに思います。
2011.01.21 09:50 | URL | 彩月氷香 #- [edit]


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読書感想がメインですが
時々、写真や雑記も。

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  • 愛のゆくえ  リチャード・ブローディガン
  • 2011年01月20日 (木)

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