FC2ブログ
Loading…
 

クラシック批評こてんぱん  鈴木淳史

2011.05.30 音楽   comments 8
4862480004
洋泉社
Amazon

あ~。面白かった!!!
今のとこ、私が今年いちばん、読みながら笑った本である。

クラシック批評の数々を、著者が独自の視点で解釈、
否、邪推しまくって、ぶった切る、という内容なのだが・・・。
はて。この面白さは、クラシックを知らぬ人にも伝わるのか?

吉田秀和と宇野功芳の批評スタイルの分析の見事さが、
この二人を知らぬ人にも感動を呼ぶだろうか?

う~ん。ムリ、なんだろうな。残念だなぁ・・・。
私としては、この興奮を誰かとぜひ分かち合いたいのだけど。

ちなみに、上記のお二人はクラシック批評界の両雄というべき御仁で、
吉田秀和氏に至っては、このジャンルの神様と言っても過言ではない。
(10代のクラシック聴き始めの頃に、私も大変お世話になったのだ)

「こてんぱん」と言っても、単純な悪口や、こきおろしではない。
何だかんだ言って、褒めてる?と勘違いさせるほど、
凝ったレトリックが施された洒落た文章である。

程よいパンチとヒネリと若干のウザったさが巧妙にブレンドされ、軽快。
若者ウケを狙い過ぎて滑ったオヤジ風な言い回しすら計算の内かと思わせる。

中途半端なスタイリッシュさと、やや無理矢理気味に下ネタへ走りがちな傾向、
に耐えられる人であれば(つまりお上品な人向きではない)・・・、
クラシックも、クラシック批評も知らなくても、かなり楽しめるはず。

「批評」の読み方の指南役となるオツな本です。
「広告」も、本書を読んだ後は今までより、面白く読めるようになると思う。
(裏の裏まで、推測しながら、いやらしく邪念たっぷりに読むのである)

クラシックがわかってた方が、数倍面白いのは事実で。
そもそも、クラシック批評自体が、私に言わせるならば、
クラシックファンだけで独占するなんて勿体ない面白さなのだが。

笑いを誘う程の美文調で飾り立てられた酷評(一見そうとは気付かせない)、
苦心惨憺して、大嫌いな演奏を褒めているような体裁を繕うレビュー。
・・・その裏に見え隠れする、大人の事情。

主義や美意識と商業主義のせめぎ合いが残す痛々しい痕跡が笑いを誘う。

(2011.5.8)
本書とは関わりのない話だけれど。私は吉田秀和氏の文章を偏愛している。

言葉は極めて平易。
感受性の豊かさ、繊細さが文面を隅々まで満たしつつ、控えめな印象。
穏やかな品位を常に保ち、しかし、その奥に時に青臭くも感じられるほどの、
真っすぐな情熱を秘めている。若々しく、瑞々しい。

純真で淋しげな憂いがあり。心地よい「揺らぎ」を纏っている。
では情が濃いのかと言えば、理性も休まず働いていて、
知のカドを全く見せぬほどに実はよく練られた構成で文章が成り立っている。

表情が優しく、口当たりがよく、平凡にさえ見えかねぬほど、
言葉使いが尋常である。しかし、滅多に見られないような気品がある。

そう、彼の文章は私の理想なのだ。


関連記事

吉田秀和、宇野功芳の二人・・、
クラシックを聴くにあたって避けられぬ二人!?
(別に避ける必要もない・・か)。
吉田老(失礼)の文章は自分も大好きですなぁ。
クラシックの悪口(?)と言えば、吉田老の場合はよく、例のホロヴィッツの酷評が、
特徴的に取り上げられますが、あれは正確なものでありました(自分は納得)。
でも、ホロさんの「ラスト・レコーディング」などは自分の愛聴版で、
一時期毎晩聴いておりましたよ(邪道・・か?今もタマに聴きます)。
(ついでに、彩月氷香さんお気に入りのアルバン・ベルクのもの、
自分はヤナーチェクのものしか持ってませんです)。

そうそう、吉田老の「セザンヌ」など絵画評論物もまた、
すばらしいものでしたぜ(文章は知性・・ですなぁ)。
このヒト、中也からフランス語(個人教授)受けてたり、
フルベンのベトちゃんの第九、ナマで聴いてるんじゃ?(違ったかナ?)。
ほとんどカミサマですなぁ。

宇野ジイ(失礼)のガイド本・・。
グレツキという作曲家・その作品はこのヒトの本で知りました。

基本、自分のクラシック感は、精神のムード音楽・・か?
このあたりが自分の音楽感性の限界のようで、
クラシックもジャズも、境目なく地続きなのでした。
吉田老の音楽展望(カイエ他)など、著作物は書棚に残りつづけております。
自分の老後(あればですが)の読書・音楽生活(狭隘になるハズ)を、
豊かなモノにしてくれそう(ボケなければいいけど、その自信まったくなし)。
2011.05.30 12:31 | URL | nao #6gL8X1vM [edit]
いえいえ、きっと楽しめると思いますよ~。
二大大家以降のクラシック批評界の迷走ぶりもオカシイです。

さすが、吉田老も宇野ジイ(笑)も、やはりご存じでしたか!
実は宇野氏の、あの思い込みの激しい書きぶりも好きなんです。
お行儀が悪くて、独善的で、はっきり言うと悪文で、でも良くわかる!
あれも、一種の才能でしょうねぇ・・・。楽しいです。
公正さは全くなくて、ぼろぼろ抜けてるとこもあるけど、妙に鋭い。

私はワケあって、クラシックが聴けなくなっておりまして。
どうやら、そろそろ大丈夫なようなので、クラシックファン再開の予定。
10年、まともに耳にしてないので、いまや、ほぼ初心者です。
さて、何から聴きましょうかね・・・。

ホロさんは好きな方に入るピアニストで。
ラスト・レコーディング、確か良かった・・・また聴きたいです。

ここだけの話、私、目ほど耳は良くないので。
まぁ・・・、素人くさい好みだと思いますよ(笑) ザ・王道!?
カラヤンがダメっていうくらいが、顕著な特徴ですね。
モーツァルトとショパンも苦手。好きな曲も少しありますが。
あ、となると王道を外れるのか・・・?

フルベンを生でとはねぇ・・・ほんとに。化石だ。天然記念物だ。
あまりに褒めちぎったので不安になり、吉田秀和作品を読み返しました。
やっぱり、いいですねぇ。みよがしでない知性・・・真似できそうにない。

クラシック批評じゃないものの方が、実は好きです(笑)
2011.05.30 21:04 | URL | 彩月氷香 #b98C2Btc [edit]
同じ著者の『クラシック名盤ほめ殺し』は読んだはずですが、こちらは本棚にあるけれど、めくった感じと本そのものの開き具合から、どうも読んでいないようです。
後期ロマン派から近代への橋渡しくらいの時期を、ぼくはほんんど聴いていなくて、いまは自分の守備範囲を広げようとしています。(ラヴェルとか…)
中公新書に岡田暁生という方の『音楽の聴き方』という本があり、第19回吉田秀和賞受賞だそうですが、とくにクラシックの批評にまつわる問題点のことをとても真摯に考察していて、好感を覚えました。
↓ 下記に感想があります。
http://blog.livedoor.jp/dick21/archives/51978327.html
ジャズもけっこう聴かれている方で、むやみに音楽にランク付けをしない姿勢にも好感を持てました。
2011.06.06 20:24 | URL | ディック #JyN/eAqk [edit]
私もクラシックの聴き方は偏っていて、しかも長くお休みしていたので。
準備運動のつもりで、評論をボチボチ読んでいます。

ラヴェルもいいですよ~。私の場合は範囲は割とまんべんなく聴きますが、
演奏家や指揮者などに偏食の傾向があります。
あと・・・そういえば現代音楽は、ちょっと苦手。

岡田暁生さんの『音楽の聴き方』のレヴュー、拝見いたしました。
これは、きっと私も好きですね。早速読みます。ありがとうございます。
2011.06.07 08:07 | URL | 彩月氷香 #b98C2Btc [edit]
あ、すいません。前のコメント、ブログネームの本の虫て書いてしまって。Twitterのトトラです(^^;;

クラシック批評は大好きです。鈴木淳史さんは『クラシック版悪魔の辞典』もケッサクです。毒のあるユーモアが嫌味になる瀬戸際で発揮されてます。

吉田秀和さんの文章は薫り高いですよね。大好きです。FM名曲のたのしみもよく聴いてました。

宇野さんにはだいぶ毒されましたね。

ぼくは小澤のベートーヴェンはスーパードライのように味気ないと言えよう。

なんて言って物議を醸しましたね(笑)いまは宇野さんは読む気しないです(^^;;
2012.09.22 05:40 | URL | トトラ #- [edit]
お名前、わかりましたよ〜
ブログ、お邪魔させて頂いた後だったので。
美人ヴァイオリンの写真に和みました。また遊びに行きますね。

鈴木淳史さんの本が図書館になくて。ブックオフにもなくて。
新刊を買うという選択肢のない私はずーっと探してるんです(笑)

あ。待て。でも、「クラシック版悪魔の辞典」って知らない!
今、チェックしたら図書館に在庫ありました!嬉しい〜
近々借りて読みますね。わぁ〜ありがとうございます。

名曲のたのしみ・・・良かったですねぇ。
宇野センセにはまぁ、なんだかんだでお世話になりました。
ワタクシ、モーツァルトがあまり好きでない時点で、
彼とは好みが合わないことに、もっと早く気付くべきでした(¯―¯٥)

スーパードライ・・・成程。スーパードライは嫌いじゃないです。
(しかし、白状しますと小澤さんちゃんと聴いたことない・・・)

ベートーヴェンは室内楽曲の方が好きだったりします。
弦楽四重奏曲が特に。愛聴番はアルバンベルクQです。
好き過ぎて、コンサートも行きましたっけ・・・懐かしい。

交響曲はフルトヴェングラーが昔は気に入ってましたが・・・
今だったら違うような気もしますね。
2012.09.22 19:34 | URL | 彩月氷香 #b98C2Btc [edit]
ブログ訪問してくださりありがとうございました。
くだらないことばかり書いてます(笑)

鈴木淳史さんはまだいいのですが、私は許さんが
苦手です。食わず嫌いなんですが生理的にダメです(笑)

アルバンベルクQのベートーヴェン全集大好き
ですよ。流麗でエレガントで素敵ですよね。

交響曲はシャイー/ゲヴァントハウス管の
全集がおすすめですよ。クライバーのように音楽が
ピチピチと躍動してます。
2012.09.23 17:00 | URL | トトラ(本の虫) #- [edit]
許さんが苦手ですか(笑)。
ありますね、何故かどうにも苦手って。

アルバンベルクQのベートーヴェンはいいですよねぇ。
あと、シューベルトの「死と乙女」も愛聴番です。

クライバーの感じだったら、好きかもしれません。
さっそく、チェックしてみますね。ありがとうございます。
2012.09.24 15:56 | URL | 彩月氷香 #b98C2Btc [edit]


  • 管理者にだけ表示を許可する

trackbackURL:http://raffiner.blog70.fc2.com/tb.php/980-c544e0cd

プロフィール

Author:彩月氷香

とにかく本が好き
読書感想がメインですが
時々、写真や雑記も。

*初めましてのご挨拶
*ブログタイトルの由来

このサイトはAmazonアソシエイトに参加しています。

表示中の記事

  • クラシック批評こてんぱん  鈴木淳史
  • 2011年05月30日 (月)

カテゴリ

カテゴリー 月別アーカイブ

 

***