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『転迷 隠蔽捜査4』今野 敏

2012.05.29 今野 敏   comments 0
4103002557
新潮社
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このシリーズ、大好きなんです。
しつこいようですが、主人公の竜崎氏がツボ。
この、偏屈で妙な正義感に溢れたオジサンの言動、
ほんとにいつまで経っても飽きません。

共感できるか?と言えば。
自分自身に彼と共通する要素が皆無で。
憧れるというには、颯爽とした格好良さが無くて。

でもね。でもね。こういう風に生きられたらいいなと思う。

ガチガチの上下関係と縄張り意識で凝り固まった組織の中で。
この人、なんでこんなに自由なんだろうなぁと感心する。
それがよくある一匹狼なんかじゃなくて。
出世街道からは脱落しつつも、バリバリのキャリアだし。

官僚である自分に誇りを持てちゃうという人なのだ。
一方でヘンなプライドはなく、階級にビビることもない。

誰もが難問、行き詰まり、不可能、と思う局面で。
「なぜだ?」とケロっとしている彼を見てると元気が出てくる。

できないことをやろうとするからうろたえるのだ。
できることをちゃんとやればいいだけだ。

・・・というのが。彼の言い分ですけれど。
いや、だからね。何が出来ることで出来ないことか見失うんですって。
最優先事項から順に、と思ってもどれもが重要に思えるんですってば。

しかし。彼は悩まない。いや。悩むことはあっても一瞬で解消する。
今考えてもわからないことは考えない。ああ・・・見習いたい。

こういう人が傍にいたら。一日中、口をあんぐり開けっ放しかも。
筋は通ってる・・・けれど。通り過ぎてて唖然とする。
えっと。そこには大きな山が立ちはだかってた筈ですが。
あの・・・あのぅ・・・いつの間にトンネルを開通させたんですか?

彼の悪友、否、腐れ縁の伊丹氏も、段々強くなって来た感じ。
竜崎氏と付き合ってるうちに鍛えられて来たかな。

彼の家族もいいですね。奥さんと息子さんと娘さん。
警察内のゴタゴタに終止していそうに見えて実は、家族も重要なテーマ。
家庭を顧みない頑固親父かと思いきや、いつも家族に振り回されてて。

この強烈な父のキャラに負けてない子供たち、応援しちゃうな。
しかし何と言っても、妻の眼力と胆力も特筆もので。
竜崎夫婦の会話の場面はいつも笑えてしまいます。

(2012.5.11)
今野敏氏の小説は読後感の爽やかさが特徴で。
それは長所であると同時に弱点にもなっていて。
「爽やか過ぎる」という残念な印象を残す事が多いです。
このシリーズに関しては、その懸念がありません。
爽やかには違いないけれど、ちゃんと胸に収まります。



『エチュード』今野 敏

2011.06.10 今野 敏   comments 2
4120041743
中央公論新社
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初めて今野敏の本を読んだ時、「警察小説」がこんなに面白いなんて!
と、大興奮した私なのですが・・・。

その出会いの一冊である「隠蔽捜査」とそれに続くシリーズ以外は、
正直なところ、及第点の佳作にギリギリ合格というもので。
もう「隠蔽捜査」シリーズしか読まなくていいや、と思い始めてました。

多作な人にありがちですが、面白いことは面白いけど詰めが甘くて。
悪くないけど感動できない、そこそこ上出来な娯楽作ばかり。

今回は久々に当たり。やはり、警察ものなのですが。
またも冴えない中年刑事が主人公な上にキャラも弱めというか控えめ。
でもって、相変わらずステレオタイプな女性が登場!

うーん。ふつうに好感は持てるけど・・・また同じじゃん!
美人で強気で、でも実は脆いところがあって、賢くて。
真面目で健気だけど、たまに意外な一面も・・・そこが可愛い。

有能な大和撫子っての?
あまりにも男性の理想像過ぎるってば~。

ま、いいよ、別に嫌いなわけじゃないから。
バリバリ男社会な警察でガンガン出世して女性の地位を高めておくれ。

プロファイリングというヤケドしがちな主題を上手く調理してる。
何か物足りないながらも、このレベルなら読み終えて満足感はある。

どうにも、相変わらずの無闇と爽やか過ぎる読後感は残念。
著者の最大の持ち味だとは思うけれど・・・。
何を読んでも味わいが同じになってしまう。
そこに安心感があるとも言えるのだけれど。

(2011.5.12)
ファンの方、ごめんなさい。ていうか私もファンなんだけど。
娯楽こそは「極上」でなきゃイヤというこだわりがありまして。
そこそこ面白い、というものが好きじゃないのです。
そもそも、そんなに読んでないだろうと言われそうですが、
いえいえ、昔、飽きるほど読んだんですよ。
今更ですが、この小説は結構好きです。


『初陣 隠蔽捜査3.5』今野 敏

2010.12.04 今野 敏   comments 4
4103002549
新潮社
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面白かった。うん。とっても。
何を書いても「竜崎さん最高!」というところに行き着くので。
自重して、あっさりとこれにて終わります。

あ、それじゃ、あんまりか。
え~と。なんで、4じゃなく、3.5かというところだけ説明。
話は進んでません。いままでのストーリーの裏話ですね、いわば。

主役の竜崎氏でなく、竜崎氏の同僚の伊丹氏の視点なのです。
で、他人の目から見る竜崎氏は、やっぱりステキ!
いいな。いいな。私、こういう人が好きっていうか。
こういう生き方がしたいんだよね~。

天才的頭脳の持ち主で超冷酷で超美形な男性に生まれ変わりたいという、
なんとも歪んだ夢(妄想?)を持っている私ですが、
それが無理なら、竜崎氏みたいな人に生まれ変わりたいです。

あ、上記の願望についての解説は途轍もなく長くなるので別の折に。
そんなの興味のある方は、いらっしゃらないかと思いますが。

未読の方がコレから読むということはないでしょうしね。
とりあえず、警察小説苦手な人にもオススメなシリーズなので。
気が向いたら、ぜひ「隠蔽捜査」読んでみてくださいな。

(2010.11.28)
伊丹氏と竜崎氏は幼馴染なんですが。
お互いに相手にコンプレックスを持ちライバル意識もある。
伊丹は年中、竜崎に対して「あいつには適わない」とぼやいてますが。
何だかんだ言ってオタクも充分、デキル男、ですやん。

『疑心 隠蔽捜査3』今野 敏

2010.11.30 今野 敏   comments 0
4103002530
新潮社
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このシリーズ、大好きなんです。
主役の竜崎が私のツボで。このオジサマ、何て言うか、 
完全にズレてるんだけど、やたら真っ当な意見を堂々と口にする。

「まったく、こんな唐変木、見たことない」と妻も呆れ果てる。
が、そう言われた彼はあっけらかんと心にこうつぶやくのだ。
「唐変木などという言い方は、今時死語だろうと思った」と(笑)

彼一流の正義感は、終始一貫していて揺るがず、清々しい。
体面、慣習、なんだソレ!正しいことを効率よくやるのみ!
しかし、ちゃんとそれを全うすべく頭脳もフルに使っている。
青臭い正義感ではない。老獪といってもいい。

そんな彼が今回、なんと!恋に落ち・・・すみません。笑えます。
わかるんです、彼の気持ち。だけど・・・、オカシイ。
ほんと、竜崎氏には青天の霹靂な災難でしたねぇ・・・ふふふ。

そして、恋愛の悩みを彼が解決する方法が傑作。
唖然としますよ・・・でもね、これある意味正解なんですね。

「救われる方法などないとわかった。この苦しみから逃れることはできない。だったら、悩み苦しんでいる自分を認めてしまおう。そう思っただけだ」

私、これ、深い真実だと思います。
恋愛に限らず、人生のあらゆる局面に通じる真理だと。
竜崎は、これを「禅問答」から導き出したのですけれどもね。

一方で竜崎の同僚の以下の台詞も、もっともだと思う。

「それを認めたからって、人間、楽になるもんじゃないと思うがな・・・。たいていは、何かの結果を期待するものだ」

それに対して、たったひとこと。

「おそらく、時間だけが解決してくれるんだ」

いや、ほんと、正し過ぎて笑える。最高だな、このキャラ。
シリーズの中で評判悪かったけど・・・私はすごく面白かったな。
終始、気味悪いくらいニヤニヤしながら読んでました。

警察小説なので、いちおう(!)事件は起こっていまして。
大統領暗殺を阻止する!という、でっかいヤマにぶち当たっている。
が、そこんとこが・・・たぶん、この小説の評判の悪さの理由かな。
事件の経過がフェアじゃないというか、面白みに欠けるというか。

ですが。竜崎さんの言動を見てるだけで退屈しない私は、
そこんとこは、全然どうでも良かったりして。

こんなぶっとんだ人が着々と成果をあげる。
その道筋に立ちはだかる普通の人々が哀れに思えてくる。
もうもう、それはそれは素敵に頑固な人です。

圧倒されるくらい正しい考えを持っていて、でもその正しさは、
社会では(特に、警察なんていう、閉鎖的な階級社会では)
通用し難いものであって・・・みな、暗黙の了解で諦めてるのに。

竜崎さんは、絶対に自分が正しいと思うことを貫く。

こう書けば、どんなにカッコイイ人かと思えば、ヘンなオジサン。
微妙に被害妄想だしさぁ。融通きかなさ過ぎだし。
朴念仁っていうのは、こういう人のためにある言葉、と思えるくらい。

あ~。でも。とにかく。私は、好き。
長く長く続いて欲しいな、このシリーズ。

(2010.11.22)

『曙光の街』今野 敏

2010.11.28 今野 敏   comments 4
4167679531
文春文庫
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ヤクザと、殺し屋と、警視庁外事課(公安)の職員。
あなたなら、誰に肩入れしますか~?
・・・ってな、話では、ございませんが。

ヤクザさんは暴力沙汰で球界追放された元プロ野球選手。
殺し屋さんは、日本人とロシア人のハーフで、元スパイ。
公安の兄ちゃんは、仕事はほどほどに、なイマドキの人。

ま、割と私は、等分に感情移入しつつ。
誰が死んでもいいよ、という心構えで読んでおりました。
(お、おい。アンタ、人が死ぬのを期待しとるのか!?)

私、一匹狼的な、社会的に道を外れちゃった人の話、
結構好きですよ・・・ま、そこそこに暴力的ですね、約2名。
血腥さはそうでもなく、どん底具合も、そうでもないかな。

バランスのとれたエンターテイメントで。
テンポよく、ダレることもなく、一気に読めます。
今野氏の人物描写は、すっきりしてていいですね。

これだけ楽しませてくれたらOK、ではありますが。
正直言うと、ちょっと何か、物足りないかなぁ。

これは今野敏氏の長所なのかもだけど、読後感が爽やか過ぎ。
私、もうちょっと「救いがない」感じの方が好き・・・。
「救いがあり過ぎる」んだなぁ、ひとことで言うと。

あと今野さん、女性を描くの下手。
ステレオタイプ過ぎるだろ~。
いっそ、登場させなきゃいいのに。
あ、ストーリー、成り立ちませんかね。

うーん。スケールもこぢんまりしてるけど。
日本を舞台にスケールあるドンパチ描いたら、ウソ臭いしなぁ。
いいんだと思うよ、これで。匙加減は正しい。

殺し屋さん小説なら、海外物の方がいいな。
すみません、無茶な比較をして。
そりゃ、あちらさんなら火器類が派手でも、
人がバタバタ死んでも、違和感無いですものね。

例えば、A・J・クィネルあたり。
「燃える男」とか、「サンカルロの決闘」とか。大好き。
ハードで、かっこいい。壮絶な復讐劇、素晴らしい!

うん、いい意味でも悪い意味でも優しいんだな、この小説。
猛烈に「救いがない」小説とか読みたくなってきた!

せっかくなら、ちょっと落ち込むくらい、
ダークな部分があってくれた方が、読み甲斐があるじゃない?

って、これは本ではなく、私の性格に欠陥があるんでしょうか・・・。

(2010.11.25)
ビミョウに、お疲れ?な私、「燃える男」ならぬ「萌える男」、
「サンカルロの決闘」ならぬ「さん刈る炉のけっと」という、
それ、作ったんじゃんないの~くらいな打ち間違いをやらかし・・・
そのうち、無意識でトンデモない暴言を吐きかねん・・・要注意だ。
あ。この本。ほんとに、充分に面白くて、上出来な娯楽本ですよ。


  

プロフィール

Author:彩月氷香

とにかく本が好き
読書感想がメインですが
時々、写真や雑記も。

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